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海外現地視察に参加して

 

日本海工(株) 豊田茂男

 

海外に出ると語学のこと治安のこと、また、みんなに迷惑を掛けてはいけないと言う思い等が頭の片隅に存在するのためか、はたまた、昼からビールを飲むせいか、国内にいる時と比べて頭の回転がスムースにならない。
これは、後続組の観衆を前にしてのゴルフの朝のスタート時に起こる状態に似ている。第一打の結果が一日のスコアーに大きく影響する過去の経験にもとずき、「何とかうまくフェアウエーに行ってくれ」と言う祈りに近い願望と緊張、これらのため頭が一種の酸欠状態になり、打った後は、ボールがどこに飛んだかを確認し、良かれば、安堵し、悪ければ、「今日もまた駄目か」とティーのことなどケロットと忘れてしまうあの状態に似ている。
初めて海外出張したときは、昼食後、たばこをその場に置き忘れ、ずっと後になって忘れてきたことを知ることが何回かあった。このようなことは、国内では経験のないことであった。
今回の旅行では、それを自覚していたので、たばこの置き忘れはなかったが、一つの失態を演じた。
ロッテルダム大規模水門現場を訪れた時、まず、事務所で計画概要の説明をビデオを介して聞き、また、模型を用いての解説を聞いた。その間、ティータイムでコーヒを頂いた。その後、現場を案内され、巨大水門を見学して、その規模の大きさに感嘆した。
この現場視察に行く前、いつも眼鏡を入れている背広の上ポケツトに眼鏡がないことに気がついた。「どこかに置き忘れたか」と一人説明会場に戻り自分の座った席を確認したが眼鏡はない。続いてコヒーを頂いた席にも行ったがそこにも見あたらない。「さてはどこかの通路でも落としたか」と歩んだ通路を一巡してみても見あたらず、あきらめの境地で事務所を出た。
一人現場視察に行くのが遅れていたため、添乗員の前田氏が「何かありましたか」とやつて来られ、「いや、眼鏡をどこかに置き忘れたようだ」と言ったその時、眼鏡は自分の目の前に在ることを自覚した。
前田氏からは、「豊田さん内緒にしておきますから」と言っていただいたが、安堵の気持ちと失態を恥じる気持ちが交錯し、いや何とも表現のしようのない複雑な気分を味わった。
自分としては、国内では経験のないこの失態を、あくまで海外での特殊環境下における失態と認識したいが、実は、女房、娘からこの頃時たま言われる正に「年のせい」の生体現象の一つかも知れない。
今回の海外旅行は、上記のようなおぼつかない状態もあったが、旅行で深く印象に残ったことを報告させていただくことにしたい。

 

その一つは、視察の最大目標であったNord horaiand Bridge(浮き橋)であった。視察前は、本橋に関する何らの知識を持ち合わせず、これまでの浅薄な知識から、浮き橋と言うのでポンツーンを横に並べこれを連結して橋としたものと思い込み、その連結方法はどのような構造になっているのか、さらに、その係留方法はどうかと言うことに興味を持っていた。
我が国の場合、浮体と言うと船舶、ポンツーン、石油備蓄のタンク(箱形浮体、アクアポリスのような有脚潜水型浮体などかあり、これらはいずれも単体の浮体であった。これ

 

 

 

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